「奴隷の色はほとんどが赤か白だ。たいていは白だな。
特に男はほぼ全てが白だ。女はたまに赤……そう、色が赤い。
いや、肌の色の話じゃないよ。“赤い味”を感じたり、“白い音”を耳にしたり、そういう風に感覚に色がついた事はないか?
僕にとっては神のものしたほとんど全てが、色つきの存在に感じられるんだよ」
「神は僕らに欲情しているんだ。
これほど多く人間の死を算出し、その一部は特段むごたらしい。
その一方でこれほど多くの性交を演出して、ふたつの理由が欲情以外にありえるか?」
「四角形……白か、そうだ、やっぱりな、白だよなあ……」
「――いや、彼女は今も裏山にいる。
たかる蝿と蛆を風情だと感じるなら、挨拶してみてもいいんじゃないか?
僕が行った時には、気丈にもまだ生きていたしな」
「白く……白で、絵を描いてみたいんだよ。
僕は、神の肌に塗ってみたいんだ」
「ほほう!」
「殺してほしいだなんておぞましい。
死ねば終わりだなんて美しい。
まだ続けろ。飯を食え。仕方なくも敵を殺せ。
自分が醜い事になど、気付かなくても構わないんだ」
「つまり君が醜かろうが、老婆だろうが、男だろうが、病んでいようが、狂っていようが関係はない。
君を物体として扱おうと決めた人間にとっては、君が何者だろうが全く関係のない事なんだ。
殺せ。
殺すしかない。それが最後の自己主張だ」
「そしていつか僕に聞かせてくれ。
人間が神に支配されているのかどうかを」