『よすがの一日』(第一部ネタバレあり)

 これは非公開の、のよすが作者用ブログから転載した文章です。(日付を確認したところ2009年07月07日、つまりのよすが公開の一年以上前に書かれた文章になっています)
 ユーザの方にとっても興味深いかもしれないと思い、公開に及びました。
 ただしタイトルにもある通り、第一部を読み切っていない方にはおすすめできません。
(第一部はイベント「アリチェとよすが、三人で」にて完結します)


「これは昔の私の日記。
 今の私は、もう少し身体の汚れを家の中に広げないやり方を学んでる。
 ……少なくとも、あなたに本当の姿を見せる時は、汚れなんか見せられないよ。
 汚れは制御できる。本当の姿でも、きれいなすべすべの……いやどっちかっていうとかさかさだけど、とにかくそんな感じのお肌にもできるから。
 だから、私の手を握っても、汚れが手についたりなんか……
 し、しないから、ね……?」
 

※ ※ ※

(起床:8時くらい)
 ベッドが自分の身体の汚れで凄い事になっているが、いつものことだ。鏡を見ると 腐肉が見返してくる、そもそもなんでこの部屋に鏡があるんだろう?

(朝食)
 今日は野菜ジュースで済ませる。
 コップが自分の手で汚れた。洗いものは後で全部まとめてやろう。

(皮を被る)
 魔術と死体から写し取った生皮を活かして、まともな女の子の姿になりかわる。
 もう何かをさわるだけで汚す事もない。でも被っていられるのは余裕を見れば半日くらいにしかならない。

(掃除)
 部屋着だけはもう諦めてる。たまに洗濯するくらい。
 メインはベッドカバーとシーツ、枕。あと皮を被る前に歩いたりさわったりした部分ぜんぶ拭き掃除。
 水をたっぷり使えば案外汚れは落ちるけど、水道代かかりすぎ。なんとかならないかな?
 終わったら聖灰を焚いてにおい消し。これも結構高いけど、この前市販の消臭剤を使ったらひどいことになった。
 ついでに冷蔵庫の裏とかもふつうに掃除。ほこりで手が汚れたけど、なんだか嬉しい。

(シャワー)
 なんとなく念入りにやる。ゆっくり磨くような感じ。
 バスタブにもあるけど、なんだか溶けそうなのであまり入らない。

(出勤:10時)
 古本屋でアルバイト。開店の準備から手伝う。
 店はだいたい店長のおじいさんと先輩の男の人で切り盛りしてる。
 たまに店長のお孫さんが手伝ってくれるけど、お子さんが来る事はない。

(昼休み)
 おべんとう。
 休憩は交代でとってる。たまにアリチェが遊びに来るのは嬉しい。
 でもあの子、たまに勤務中にも邪魔しに来る。というかそっちの方が多い気がする、どうしよう。

(退勤:18時)
 本屋じたいはまだ開店してるけど、わたしのシフトはここで終わり。
 時給制だし、もうちょっと長く働かせてくれるよう頼んでみてもいいかもしれない。
 でもそうしたら、みんなと遊びにくくなる。

(あそぶ)
 今日はユーザとアリチェと、待ち合わせをしてた。
 内容はいつも通り。みんなで街を歩いておしゃべり。
 今日は塩チョコのクレープとかいうものが新発売してた。びみょうだと思う。
 でもユーザがわたしたちにおごってくれたのはおいしかった。
 アリチェもすごく喜んでたみたい、もしかしてユーザはアリチェを狙ってるのかな? いや、ユーザはそんな人じゃないと思う。
 アリチェには梅こぶ茶味のキャンディを押しつけられたので、おかえしにとうがらしのキャンディを「いちごあめだよー」とプレゼントした。
 ほんとはとうがらしの形をしたりんご味の飴なんだけど、アリチェはこのネタ、どこまでわかってくれるだろ?

(帰宅:20時くらい)
 もうあんまり皮の保ち時間に余裕はないけど、まだ本を読んだり音楽を聴いたりだらだら。
 今はヘッドホンも好きに使えるし、手袋なしに本も読める。鏡を見てもいいし。

(皮を脱ぐ)
 とにかくていねいにやること。でないと大事な鎧を傷つける。
 もとの姿に戻った後は目をつぶってベッドに。特に何も見たくない。

(夕食)
 でも食事は必要になる。
 レパートリーはあまり多くない。作り置きのクリームソースでパスタ。
 明日のお弁当も今日のうちに作っておく。
 皮を脱ぐ前に何をやって、皮を脱いだ後に何をやるかは、毎日悩む。
 どうせ皮を被っていても、ほんとうは同じ事なのに。

(魔術の修練)
 今日の夜はこれで時間を潰す。魔術とは自分の心の問題なのだ、と最初の本には書いてあった。
 瞑想と詠唱を続けるだけでも、いくらでも時間は潰せる。
 じぶんをみる。じぶんをみる。じぶんをみる。

(就寝:翌1時くらい)
 つかれた。
 おやすみなさい。

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