謎バトン

物語仕立てと言うべきか。


■1.今日はO型が足りません
 ――ああ、うん。大変だったよ、今日もひどいもんだった。
 いや、大丈夫大丈夫。俺自身は無傷――違う、ほんとだって。
 O型? ……大丈夫だってば、処理済。心臓に杭を刺して、口にニンニクを詰めて、棺桶に鎌を入れて、な?
 血液型を選り好みする吸血鬼って、ほんとにいるんだな。滅ぼしてみりゃ皆同じだけどさ。
 ああ。うん、そう思う。……ほんとだな、一度でいいから、会いた――
 ――いや、ちょっと待て、来ないでいい、来るな!
 ち、違う! そうじゃなくて、邪魔なんてことあるわけないだろ!
 ……泣くなよ。
 頼むよ。
 俺だって泣いちゃうよ、なあ……
 
■2.道端で可愛いメイドさんに「御主人様ぁVv」
「いや、すげぇな」
 声をかけられた瞬間、俺は思わずつぶやいた。
 メイドがどうこうどころか、こんなに可愛い子が営業スマイルを浮かべているところなんて見た事がない。
「はい?」
 きょとんとした表情も、首の傾げ方すら完璧。
「あー、いや、まあ……悪い、急いでるんでな」
 足早にそいつから離れたのは、このままだと俺がこのメイドを抱き寄せて撫でまくりかねないからだ。
「あう、引き止めちゃってごめんなさいー」
 去りゆく俺にまで頭を下げてくれる。こうもまめな宣伝の仕方をされると、背後にメイドカフェの看板がある事も気にならない。
「……惜しかったかもな」
 いや、ほんとに可愛い男の子だったよ。
 
■3.「SですかMですか」
「あなたはSですか?」
 あたしは彼女と二人きりで、狭い部屋の中に閉じ込められている。
「それともMですか?」
“赤いマントか青いマントか”という怪談を思い出す。
 赤いマントを選べば怪人にナイフで刺され、青いマントを選べば血を吸われ。
「あなたはSですか?」
 彼女は縄で縛られている。
「それともMですか?」
 いつから二人きりでいるのか思い出せない。
 部屋にはハンマー。
 それと釘。
 なぜかあたしは、この前空けたピアスの穴を思い出す。
「あなたはSですか?」
 彼女はにやにや笑っている。
「それともMですか?」
 あたしはいまだに答えられない。

■4.二刀流ですか?
「んー、二刀流ね。どうなんだろうね、ほんと。 
 そりゃ、ボクは男の子だろうが女の子だろうがどっちだって良いタイプだけどさ。
 でもそうだから二刀流――あ、両刀使い? まあ、そういうものかと言われると、どうなんだろうね?
 だってボク、どっちにしろ殺しちゃうもん。
 これってセックスなのかな? 刺したり叩きつけたりして、それでべたべたしたものにまみれて……
 ほら、どう思う? どうして答えないの? あなたはSですか? あは。
 そもそもボクって男だったっけ? 女だったっけ? というかボクって人間だったっけ?
 ほんとは気にしないんだけどね。ねえ? あなたはMですか? あははははは。 
 ねえ、いつになったら返事してくれるの?
 いつになっても返事なんてしないんだよね?
 冷たくなったし、ゆすると揺れるし。これっていつも通りになったって事だよね。あはははははははははははは。
 ねえ? ……ねえ?」

■5.ちっさいおっさんが現われて「げへへへ」
 そのおっさんに世界は征服されたんだが、未だに誰も気付いてない。


■6.蟹座ですか?
 蟹座だってさ。
 職業は当然学生。血液型はB型だったか、どうでもいいが。
 ただもうそいつはどこにもいない。
「あの子は、最後にさ」
「ん?」
「やさしくして、って言ったんだよ」
 それは随分傑作だ。

■7.「君の瞳は百万ボルト」と中の下ルックス異性にプロポーズされたら…
「君の瞳は百万ボルトッ!」
 そう叫んでテーザーの針を奴にブチ込んだ時は、正直なところ良い気分だった。
 とんでもない音と共に、空気中にまでわずかに紫電が散る。
 実際の電圧はせいぜい六万ボルトと言ったところだが、贅沢は言うまい。常人なら気絶どころか数秒で目玉が飛び出して死ぬような電撃だ。
「あはははははははははははははははははははははは」
 ほら、奴にもちょっとは効いてる。
「ああ、皮一枚くらいは効いてるさ――はは! あはははははははははははははッ!」
“怪物と戦う者は、自らが怪物とならぬよう警戒せよ”
 その箴言を蹴り飛ばし、俺は自ら怪物の哄笑をあげる。
 神は死んだ。俺達が殺した。
 次は悪魔も死ぬ番だ。

■8.炎の魔石と氷の魔石「次はボス戦だ!」どっち持っていく?
『彼らは、全地の主のみまえに立っている二本のオリブの木、また、二つの燭台である。 もし彼らに害を加えようとする者があれば、彼らの口から火が出て、その敵を滅ぼすであろう。
 もし彼らに害を加えようとする者があれば、その者はこのように殺されねばならない。
預言をしている期間、彼らは、天を閉じて雨を降らせないようにする力を持っている。さらにまた、水を血に変え、何度でも思うままに、あらゆる災害で地を打つ力を持っている。 そして、彼らがそのあかしを終えると、底知れぬ所からのぼって来る獣が、彼らと戦って打ち勝ち、彼らを殺す。
 彼らの死体はソドムや、エジプトにたとえられている大いなる都の大通りにさらされる。彼らの主も、この都で十字架につけられたのである。
 いろいろな民族、部族、国語、国民に属する人々が、三日半の間、彼らの死体をながめるが、その死体を墓に納めることは許さない』
 ――ヨハネの黙示録、第11章第4節から第9節

■9.「私と仕事、どっちが大切なの?!」
「私と仕事、どっちが大切なの?」
「そんなの、君が大事に決まってる」
 そう言った彼の唇に、鋭い犬歯が覗いたので、私は疑うのを止めることにした。
 そして彼の牙が私の首筋に触れた時、私は心から安堵した。
 一体いつからこんな事になってしまったんだろう?
 もしかして、最初から?
 でも、何にしろ、彼が今私を求める心だけは本物だ。
 
■10.次にこのバトンを投げる五人をどうぞ!
 なんかもう無理。

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